【詩】【映画評】Hecate
平凡に生きて
漂うように辿り着いた
あなたの元に
こんな運命に出会うはずの月夜に
無防備なわたしのままで
挑んでしまった罰
溺れるのは容易くて
息継ぎも困難なほどに
予想外の情熱を
冷ます術を知らずに
流れる時間の上で無力なままに
暗がりで求めてばかりいる
奔放なあなたを
細く気味の悪い路地で
色が飛び交う
異国の匂いと夜に酔う
『あなたが恐ろしい』
癒えない傷を負ってなお
あなたを愛してしまう
女神ヘカテ
ヘカテという映画を観た。
1982年、フランス・スイス製作
衣装はCristian Dior監修
お洒落な布がたくさん使われてる。
アフリカ(きっとモロッコ辺り)の風情も
エキゾティックさで
劇中のエロティックを
湿っぽくさせない絶妙な按配
内容はなんてことない。
なんてことない。本当に。
ただフランス語映画独特の
ポエムの連続脚本と
演出も無駄がなくて
とにかく光と色合いが美しいのと
Diorのなせる布のお洒落さ。
これ、もう一度書いてしまうほど
あんな緑。あんな柄。
上質な布たち。
絵を観る感覚で観る映画かな。
この曖昧な不気味で不思議で
とにかくお洒落ってこの感じを
当時の映画館の空気の中
肌で味わってみたかった。
40年前の映画館で
こんなものを観たら
何週間かは眠れなくなりそう。
ひとりだけぐんと
大人になってしまうような
もうこちらの世界に
戻ってはこられないような
きっとそんな作品だったに違いない
2023年に見る価値があるかと問われると
一度は見てみてもいいけど、
早送りしたくなるかも。ね。
といったところ。
あー、40年前に観たかった!
それかせめて映画館で。
それではごきげんよう。
さよなら、さよなら、さよなら。