【詩】八月十日
8月の湿度の高い夜
さっき通り過ぎたばかりの雨の跡に
車のヘッドライトが反射して
艶やかに光るので
眩しさすら感じる田舎道の上
なまぬるい夏の夜風といっしょに
歩みを進めるこちらの目の中で
何もかもが不規則に揺らめいて
それはきっと、
無機物の重なりとは違った
心の植わった夜の気がする
人の体の熱に
近しい温度の空気
人工的な光を放つ
動く無機質の塊
そしてそれを跳ね返す
どこから来たのかわからない
たくさんの水玉の跡
濡れた靴を気にしながら
家路を急ぐ
軟な人間のわたし
これらは全部ひとつ残らず生きて
ひとつ残さずにお互いが互いのためにここにある
今日の、この瞬間の夏の道の上に